「この案件、まずいかもしれない」――現場PMから1on1や立ち話でそう報告された瞬間に、経営者・代表・開発責任者がやるべきことは、犯人探しではありません。
にもかかわらず、多くの中小IT受託開発会社で最初に行われるのは「なぜそうなったのか」をPMに問い詰めることです。これは止血の役にはほぼ立ちません。
赤字化しそうな案件で経営層が最初にやるべきは、PMに対する詰問ではなく、判断材料の整理です。本記事では、その整理に使う5つの観点をまとめます。
なぜ「原因追及」を先にやってはいけないか
赤字案件は、止血と原因分析を分けて扱う必要があります。経営層が原因追及を先にやると、現場PMは事実を出しにくくなり、本当に必要な情報が遅れて上がってきます。
最終的に被害を大きくするのは、原因追及そのものではなく、原因追及を急いだことで止血が遅れたケースです。
経営者が確認すべき5つの観点
PMから赤字の兆候を聞いたら、まず以下5観点を整理します。順序にも意味があります。
観点1:残工数の見立てが現実的か
最初に確認すべきは、現時点での残工数の見立てです。
ここで多くの会社が誤るのが、「PMが出した残工数」を鵜呑みにしてしまうことです。赤字案件の残工数は、PM本人が無意識に小さく見積もりがちです。
経営層は、PMが出した残工数に対して「未確定要件・手戻り・テスト不足分」を上乗せした第二の見立てを並べて見るようにしてください。
観点2:未確定要件と顧客確認待ちの量
未確定の要件、顧客確認待ち、社内未決のまま走っている仕様――これらが残っている量を確認します。
赤字案件は「決まっていないこと」に工数を奪われるので、ここの棚卸しは粗利を守る最重要ステップです。
観点3:顧客合意の現在地
「顧客は何に同意しているのか」「何に同意していないのか」「契約上の前提から外れているものは何か」を確認します。
赤字案件で顧客折衝が難航するのは、ここの線引きが社内で揃っていないことが原因のほとんどです。
観点4:追加費用を請求できる余地があるか
経営層は、変更履歴・議事録・顧客とのメール・SOWの記述から、追加費用を請求できる余地があるかを冷静に確認します。
「請求しにくいから」という空気でPMが請求を諦めている案件は、ほぼ全社的に存在しているはずです。
ここは経営者が直接判断すべきところで、PMだけに背負わせる話ではありません。
観点5:体制変更・撤退の余地
最後に、体制変更や工程縮減で止血できる余地、最悪のケースとして撤退・縮小の余地を確認します。
「撤退」という言葉を出すことを禁じている会社もありますが、選択肢として並べた上で取らないのと、選択肢にすら入れないのとでは、意思決定の質が変わります。
PMを責めずに案件を救うために
ここまで5観点を見ると、赤字案件の対応とは、PMの能力に依存する話ではなく、経営層がどの情報を、どの順序で揃えるかの話だと分かります。
中小IT受託会社で赤字案件が再発する理由は、この情報整理の型が会社にないからです。型がなければ毎回PM個人の感覚で進み、毎回同じズレが起きます。
炎上初動を組織として整えたい方へ
赤字化しかけている案件、すでに炎上している案件の初動を整えたい場合は、PJ炎上初動ナビ を使ってください。
炎上タイプ(要件迷走・追加要望・品質・関係悪化・契約前提ズレ)を判定したうえで、最初の1週間に何を確認・誰に報告・どこを止血すべきかを案件状況に合わせて出します。
経営者・開発責任者がPMと一緒に画面を見て初動を揃えるだけでも、被害規模は変わります。
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