「月次の売上・利益は見ているが、毎月のように案件が赤字着地する」――小〜中規模IT受託会社の開発責任者からよく聞く悩みです。
売上と利益は結果であり、見えた時点では手を打てるタイミングを過ぎています。赤字を減らすには、結果が出る前の先行指標を見る必要があります。
本記事では、開発責任者がPMから上げてもらうべき先行指標5つと、見方を整理します。
なぜ「売上・利益」だけでは早期検知できないか
売上・利益は2〜3か月遅れて見える指標です。月次予実会議で赤字が見えた頃には、ほとんどの案件で打ち手がありません。
赤字を早期に検知するには、案件の中で今起きていることを捕まえる必要があります。それが先行指標です。
開発責任者が見るべき5つの先行指標
指標1:残工数の見立て(毎週更新)
各案件について、PMが「あと何人日で終わるか」を毎週更新しているか。
PMの見立てを鵜呑みにせず、未確定要件・手戻り・テスト不足分を加味した「上長補正後の残工数」も並べて見ます。
見方
- 計画工数を超え始めたら、即介入のタイミング
- 残工数が毎週増えている案件は、赤字確実
指標2:変更件数と請求/吸収の区分
各案件で発生した変更要望の件数と、追加費用を請求できたものと自社で吸収したものの区分。
見方
- 吸収が増えている案件は、変更管理が機能していないサイン
- 変更管理表が存在しない案件は、それ自体が赤字リスク
指標3:課題滞留件数と滞留日数
課題管理表に登録された課題のうち、未解決のまま7日以上残っているもの。
見方
- 滞留課題が10件を超えている案件は、確認待ちで粗利を消費している可能性が高い
- 課題管理表が更新されていない案件は、運用そのものが崩壊している
指標4:レビュー指摘件数と手戻り件数
設計レビュー・コードレビューの指摘件数、テスト工程での手戻り件数の推移。
見方
- 指摘件数が想定の2倍以上なら、品質問題として粗利を圧迫している
- 後工程ほど指摘が増えている案件は、見積前提から崩れている
指標5:顧客確認待ちタスクの平均日数
顧客に確認を投げてから、回答が返ってくるまでの平均日数。
見方
- 平均7日を超えるなら、顧客側の体制不足の可能性が高い
- 確認待ちが続いている期間も粗利は消費されている
開発責任者が運用する週次レビューの形
5指標を週次で見るためには、PMから上長レビューに上げる様式を統一する必要があります。
- 各PMが、自案件の5指標をA4一枚にまとめる
- 開発責任者が15〜30分の週次レビューで全案件を横並びで見る
- 赤信号案件は別途、上長と詳細レビューを行う
これだけで、赤字案件の早期検知率は大きく上がります。
指標を見ることがPMの育成にもなる
5指標を毎週見続けると、PM自身も「数字で案件を語る」習慣がついていきます。
これは見積精度の向上、変更管理の徹底、進捗判断の精緻化に直接つながります。
指標管理はマネジメントツールであると同時に、最強のPM育成ツールです。
自社のPM運営を点検したい方へ
「うちの会社では、先行指標を見る仕組みが回っているか」を点検したい開発責任者・経営者の方は、PM組織健康診断 を使ってください。
5指標の運用状況だけでなく、見積・変更管理・育成体制まで含めた現状を経営判断に使える形で可視化します。
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