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炎上予防・立て直し

炎上案件で顧客合意を取り直すための順番

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炎上案件で顧客合意を取り直すための順番

炎上案件で「まず何から手をつけるか」を考えるとき、多くの人が「課題の解決」や「スケジュールの立て直し」から入ります。しかし、それより先にやるべきことがあります。顧客合意の確認です。

炎上案件では、顧客との間に複数の合意がずれていることが多い。「この機能はスコープ内だと思っていた」「このリリース日は確定していたはずだった」という認識の不一致が積み重なっていることが原因の一つです。

合意がずれた状態でスケジュールを引き直しても、次の週にまた別のズレが表面化します。まず合意を取り直し、その上でスケジュールや対応計画を作ることが、効率的な立て直しにつながります。

炎上案件では合意が崩れていることが多い

炎上が起きている案件で顧客との間にある「ずれ」は、突然発生したものではありません。プロジェクトの初期からある小さな認識のズレが、進行とともに拡大していきます。

「この機能はもう少し細かい動作も含まれているはず」「追加になったあの件は当初の見積もりに含まれているよね」——これらの認識がすれ違ったまま進んだ案件では、「仕様が決まっていない」「確認に時間がかかる」「やり直しが発生する」という問題が連続して出てきます。

この状態で問題対応だけを進めても、根にある合意のズレが解消されないため、問題が再発します。

順番1:目的を戻す

最初に確認するのは「このプロジェクトで顧客が実現したいことは何か」という目的です。

炎上案件では「何としても〇〇を実現したい」という顧客の優先事項と、「何としても〇〇を納期内に収めたい」というプロジェクト側の優先事項がズレていることがあります。

「このプロジェクトで最も重要なのは何ですか?期日ですか、機能の完成度ですか、コストですか」という確認から始めることで、その後の判断基準が共通になります。

順番2:スコープを確認する

目的の確認ができたら、次はスコープです。「このプロジェクトで対応する範囲」の認識が合っているかを確認します。

確認の仕方:「現在の契約・仕様書に記載されている対応範囲」と「顧客が今期待している機能・対応内容」を並べて確認します。乖離がある場合、その乖離はどのタイミングで生じたかを確認します。

スコープに関する合意は「今契約で確定している対応範囲はXXです。これ以外の要望については、別途影響確認をしてから判断します」という明確な言い方で確認します。

順番3:優先順位を決める

スコープが確認できたら、スコープ内の機能・対応の優先順位を確認します。

「今回のリリースでどうしても必要なもの」と「後のフェーズでも許容できるもの」を、顧客と一緒に分けます。炎上案件では全機能を同時に揃えることが難しい場合があります。優先順位が明確であれば、スコープ調整の交渉が具体的になります。

順番4:納期とリリース条件を確認する

優先順位が決まったら、納期の確認に進みます。このタイミングで「現在の進捗と優先機能の完成見込みから、現実的な納期はいつか」を提示できます。

「契約上の納期はXXですが、現在の状況から全機能のリリースは〇月〇日の見込みです。優先機能のみであれば〇月〇日は達成可能です」という提示の仕方ができます。

リリース条件の確認も重要です。「リリースに必要な品質レベル(テストの完了条件)を確認する」「受入テストの期間と担当者を確認する」ことで、納期に向けた具体的な計画が作れます。

順番5:変更ルールを決める

最後に、今後の変更についてのルールを確認します。「仕様変更・追加要望はどのように扱うか」「変更があった場合の対応プロセス」を決めておくことで、同じ問題の再発を防ぎます。

「追加要望は一度受け取り、工数と納期への影響を確認してから対応可否を回答します」「仕様変更は変更依頼票を経由して管理します」という手順を、炎上案件の再設計時点で顧客に説明しておいてください。


5つの確認が完了した段階で、「プロジェクトの現状と、立て直しの計画」を文書化して顧客に渡してください。書面で共有することで、口頭確認だけでは起きやすい「言った・言わない」のリスクが下がります。

再合意後の最初の30日が信頼再建の分岐点

顧客との合意を取り直した後、最初の30日間の対応が信頼再建の成否を左右します。この期間に「言ったことが守られる」という実績を作ることが、炎上前に失った信頼を回復する唯一の方法です。

具体的には、再合意時に設定した中間マイルストーンを一つひとつ達成し、達成したことを顧客に報告してください。「先週合意した〇〇が本日完了しました」という一文のメールが積み重なることで、顧客の中に「今度は守ってくれる」という実感が生まれます。

最初の30日で守れそうにないマイルストーンが出てきた場合は、早期に顧客に伝えて再調整してください。「また言わなかった」という状況の繰り返しが、信頼回復を最も遅らせます。再合意後の遅延は、炎上前の遅延よりも深刻に受け取られることがあります。

顧客の担当者が変わった場合の対処

炎上案件の途中で顧客側の担当者が変わるケースがあります。新担当者は炎上の経緯を詳しく知らないため、PMとして「これまでの経緯と現在の合意内容」を簡潔にまとめた引き継ぎ資料を用意することをおすすめします。

口頭説明だけでは、新担当者が「前の担当が言っていた」という形で後から話を覆すリスクがあります。書面で合意事項を共有することで、担当者交代による混乱を防げます。炎上案件の引き継ぎほど、文書化の価値が高い場面はありません。

再合意を「通過点」として位置づける

顧客との再合意は「ゴール」ではなく「立て直しのスタート地点」です。合意を取り直した時点で安堵してしまい、その後のフォローが薄くなるPMが少なくありません。

再合意後に必要なことは「合意内容を関係者全員が同じ解釈で理解しているかの確認」です。PMの頭の中での合意内容と、顧客担当者・開発チーム・上司が持っているイメージが一致しているかを確認するために、再合意後に全員向けの説明会や合意内容の書面共有を行ってください。

合意の解釈がずれたまま進むと、2週間後に「そういう意味ではなかった」という問題が再発します。炎上案件の再合意は、丁寧な「合意の展開」まで含めて完了とみなすことが重要です。

炎上案件における顧客合意の取り直しは、PMとしての真価が問われる場面の一つです。「再合意すれば終わり」ではなく、その後の実行と報告の積み重ねが本当の信頼回復につながります。短期的な難局を乗り越えることで、長期的な顧客関係の基盤が作られていきます。

顧客合意の取り直しと炎上案件の立て直し実務については、炎上予防・立て直しパックで体系的に学べます。

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