「案件別の粗利を出してと言われたが、そこまでの管理会計はやっていない」――従業員50名以下のIT受託開発会社で、よく聞く声です。
ただ、案件別粗利の見える化は管理会計の話ではなく、経営判断とPM育成のための実務情報です。会計の正確性よりも、判断材料として使えるかが重要です。
本記事では、小規模IT企業が案件別粗利を可視化するメリットと、Excel1枚で始められる進め方を整理します。
「案件別粗利=管理会計」と誤解しない
中小IT企業の経営者・代表が案件別粗利を敬遠する理由のひとつが、「管理会計の世界に踏み込みたくない」というものです。
が、ここで言う案件別粗利は、税務的な厳密さは求めません。経営判断とPM育成のために、案件単位での儲かり方を見える形にすることです。
案件別粗利を見える化する4つのメリット
メリット1:PM育成に直結する
PMが自分の案件の粗利を見れるようになると、「自分の判断が会社の利益にどう影響したか」が初めて実感できます。
これは座学では得られない学びで、見積精度・変更管理・進捗判断の習熟が加速します。
メリット2:見積精度のフィードバックループが回る
見積時の工数と実工数の差分、見積金額と最終粗利の差分を案件ごとに見ると、見積担当者ごとの癖・領域ごとの精度差が見えてきます。
このフィードバックループは、見積精度向上の最も効果的な仕組みです。
メリット3:再発防止が組織知になる
赤字案件と高粗利案件を並べて比較すると、共通点が見えてきます。
「この業種は赤字率が高い」「この規模感は黒字率が高い」「この技術領域はPMによって粗利差が大きい」――こうした知見が経営判断に直結します。
メリット4:案件選別の精度が上がる
すべての案件を取りに行く必要はありません。粗利データがあれば、「この案件は受けない」という判断が経営として可能になります。
売上至上主義から脱却し、利益で会社を回す土台になります。
Excel1枚で始める粗利可視化
会計ソフトとの連携や、原価計算の厳密化は必要ありません。以下の列を持つExcel1枚で十分です。
- 案件名/顧客名/開始月/終了月
- 業種・技術領域・規模
- 見積金額/見積工数
- 実費用(人件費+外注費)/実工数
- 売上/粗利/粗利率
- 担当PM/変更件数/追加請求金額
- 主な特記事項
最初は精度が荒くて構いません。3〜6か月走らせる中で、必要な列を足していきます。
粗利情報をPMに渡すときの注意
粗利情報をPMに渡すときは、「粗利責任を負わせる」と「粗利視点で考える材料を渡す」を区別してください。
- PMに数字責任を負わせる前に、工数・変更・リスクの管理体系を理解させる順序が必要
- 粗利は「結果」であって「目標」ではない
- PMが見るのは粗利そのものではなく、粗利を生む手前の指標(工数・変更・課題・レビュー・確認待ち)
自社の粗利可視化と育成体制を整えたい方へ
案件別粗利の可視化を、PM育成・案件運営の仕組みとセットで整えたい場合は、PM組織健康診断 を使って自社の現在地を点検することから始めるのがおすすめです。
診断結果から、可視化・育成・運営の優先順位を整理した上で改善計画を立てられます。