受託開発会社のCTOが「技術のトップ」として機能するはずが、実態は「最も経験豊富なPM」として案件管理に追われている——この状態は珍しくありません。
CTOが案件管理を手放せない状態は、CTOだけでなく会社全体に問題をもたらします。技術戦略の停滞、PM候補の育成機会の喪失、CTOの疲弊という3つの損失が同時に起きます。
CTOが案件管理を手放せない原因
CTOが案件管理を抱え込む原因には、構造的なものがあります。
「自分でやった方が早い」の慣性:CTOは技術と案件管理の両方を高いレベルでこなせます。PM候補に任せると手戻りが発生するため、「時間的にも品質的にも自分でやった方が確実」という判断が続きます。
PM候補への判断権限の移譲手順がない:「任せる」と言っても、どこまで任せるかの基準がない。任されたPM候補は何でもCTOに確認し、結果的にCTOの業務量は減らない。
顧客がCTOを指名する:「あの方に対応してほしい」という顧客の要求に応え続けた結果、CTOが顧客のキーパーソンになってしまい、抜けにくくなる。
CTOが案件管理を抱え込むと起きる問題
CTOが案件管理から手を引けない状態が続くと、以下の問題が順番に起きます。
技術投資の遅れ:新しい技術スタックの選定、開発プロセスの改善、採用要件の見直しといったCTOにしかできない意思決定に時間が使えなくなります。競合他社が技術的に進化する中で、自社の技術力が相対的に低下します。
採用・育成の放置:エンジニア採用の面接設計・育成体系の構築もCTOが関与すべき業務ですが、案件管理に追われると後回しになります。中長期的な人材計画が機能しなくなります。
PM候補の育成機会の損失:CTOが判断を抱え込むほど、PM候補が判断する機会が減ります。PM候補は「すぐCTOに確認する」習慣が強化され、3年経っても自走できません。
CTOの疲弊とリスク:長期にわたって技術判断・案件管理・採用面接をすべて担い続けると、CTOが消耗します。CTOが病気・休職・退職した場合、会社への打撃が極めて大きくなります。
最初に整えるべきこと
CTOが案件管理から段階的に手を引くために、最初に整えるべきことがあります。
CTOの役割を再定義する:「CTOは何に時間を使うべきか」を明文化します。技術戦略・アーキテクチャレビュー・採用基準の設定・CTOにしか判断できない顧客折衝——これらに集中できる状態を目指します。
PM候補を1名以上指定する:「この案件はこの人が主担当」という形で、具体的な案件に対してPM候補を紐付けます。最初は小規模案件から始め、CTOが週1回の壁打ちに入る形でフォローします。
顧客への説明を標準化する:「担当PMのXXさんが窓口になります。技術的な大きな判断についてはCTOも参加します」という説明を顧客にする機会を作ります。CTO依存の顧客関係を徐々に切り替えます。
具体的な改善ステップ
1か月目:直近の案件で「CTOが関与した判断」を全部書き出す。そのうち「PMに任せられる判断」を選別する。
2〜3か月目:選別した判断を、指定PM候補に移譲開始。CTOは週1回の壁打ちに30分入り、フィードバックのみ提供。案件の最終判断はPM候補がする。
4〜6か月目:移譲した範囲でPM候補が自走できていることを確認し、次の判断範囲の移譲を進める。CTOは技術戦略・採用に使う時間を週単位で確保し始める。
社内で確認したいチェックリスト
CTO兼PM状態の深刻度を確認してください。
- CTOが案件会議に参加しなくても案件が前に進む
- 顧客の主連絡先がCTOではなくPM候補になっている案件がある
- CTOが案件管理以外(技術戦略・採用等)に使える時間が週10時間以上ある
- PM候補がCTOに確認せず自分で判断できる領域が明確になっている
- CTOが「案件管理を手放す計画」を持っている
3つ以上「いいえ」なら、CTO兼PM状態の解消を優先すべきです。
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まとめ
CTOが案件管理を手放せない状態は、技術戦略・採用・PM育成のすべてを同時に止めます。段階的な権限移譲と壁打ち体制を整えることで、CTOが本来の役割に戻れる環境を作ることができます。
自社のPM育成課題を確認したい場合は、PM組織健康診断 で現状を整理できます。
社内でPM育成を始める流れを確認したい場合は、PM育成ガイド も参考にしてください。
実案件を題材にPM候補を育てたい場合は、PM育成支援について見る からご相談ください。