「リスク一覧を作っておいて」と言われたとき、まず何を書けばいいか分からない——これは新任PMの多くが経験します。心配事を箇条書きにしたものの、「これを管理に使えるのか?」という疑問が残ったままになることも多いです。
リスク一覧を作ることより大切なのは、作る前に「何をリスクと呼ぶのか」を理解することです。
リスク一覧は心配事リストではない
「何か問題が起きるかもしれない」という漠然とした不安をリストに書いても、それはリスク管理にはなりません。リスク管理で必要なのは、「起きた場合に対処できる状態を作ること」です。
心配事とリスクの違いはこうです。
- 心配事:「品質が悪くなりそう」
- リスク:「テストフェーズで環境準備が2週間以上遅れると、リリース日が守れなくなる」
リスクは「いつ・何が起きると・どうなる」まで書いて初めて管理できる形になります。これを理解してからリスク一覧を作ると、内容が大きく変わります。
考えること1:何が起きると困るのか
プロジェクトに影響を与える「困った事態」を具体的に想像します。
- スケジュールが遅れる原因になりそうなものは何か
- コストが増える原因になりそうなものは何か
- 品質が下がる原因になりそうなものは何か
- 顧客との認識ズレが起きそうな場面はどこか
「困る」と感じる場面をひとつひとつ具体的にイメージすることがスタートです。この段階では粗くても構いません。
考えること2:起きた場合の影響
リストに入れる候補が出てきたら、「それが起きた場合、プロジェクトにどんな影響があるか」を考えます。
- スケジュール:何日・何週間の遅延になるか
- コスト:追加費用が発生するか
- 顧客関係:信頼を失う場面になるか
- 次のフェーズへの影響:後工程がすべて止まるほどの問題か
影響が軽微なものは後回しにして、影響が大きいものを優先的に管理します。
考えること3:早期サイン
リスク管理で最も実践的な問いは「このリスクが現実化しつつあるとき、何を見れば分かるか」です。
例えば、「外部ベンダーの納品遅延リスク」であれば、早期サインは「週次報告で進捗率が計画より5%以上低下している」や「ベンダー担当者の連絡が遅くなってきた」などになります。
早期サインを考えておくと、週次定例でその兆候を確認する目が育ちます。
考えること4:対応方針
リスクが発生した・または発生しそうになったときに「どう動くか」を考えておきます。
完璧な対策を考える必要はありません。「○○が起きたら、まず△△に相談してから判断する」という程度でも、リスク一覧に書いておくことで「慌てない」状態が作れます。
リスク一覧の最小フォーマット
以上を踏まえた最小フォーマットは以下の5列です。
| リスク内容 | 影響 | 発生確率 | 早期サイン | 対応方針 |
|---|
最初から全部埋める必要はありません。「リスク内容・影響・対応方針」の3列だけで始めても、心配事リストとは全く違うものができます。
記入例
| リスク内容 | 影響 | 発生確率 | 早期サイン | 対応方針 |
|---|---|---|---|---|
| 外部ベンダーの設計書提出が遅延する | テスト開始が1週間後ろ倒し・リリース日がずれる | 中 | 週次進捗が計画より5%以上低下している | ベンダーPMに連絡して状況確認→社内PMへ報告→スケジュール調整の相談 |
リスクは「最悪のシナリオを考える」のではなく、「現時点で気になっていること」から一つ試しに書いてみることで始まります。
まとめ
リスク一覧を作る前に考えるべき4点を整理しました。
- 何が起きると困るのかを具体的に想像する
- 起きた場合の影響を整理して優先順位をつける
- 早期サインを考えて定例で確認できる状態にする
- 対応方針をざっくりとでも書いておく
「リスクを全部洗い出さなければ」と思わず、今の案件で「最も困る3つ」から始めることをおすすめします。
炎上予防・リスク管理のスキルを体系的に学びたい方は以下もどうぞ。