「結局、今回の追加分は当社で吸収します」――受託開発の現場でPMがよく口にする言葉です。
このとき、顧客が悪いと感じているPMは多いですが、振り返って整理すると、請求できなかった理由のほとんどは自社側の準備不足です。
本記事では、追加費用を請求できない案件の共通点と、PMが運用すべき手順を整理します。
「請求できなかった」案件に共通する4つの不足
不足1:変更記録が残っていない
口頭で受けた要望、Slackやチャットで流れた依頼、会議の雑談で出た「ついでに」――これらが議事録・課題管理表・変更管理表のどこにも残っていない案件は、後から請求根拠を作れません。
請求の最初の前提は、変更があった事実を双方が共有していることです。
不足2:合意タイミングが遅すぎる
変更要望を受けて1〜2週間経ってから「これは追加費用が必要です」と言うのは遅すぎます。
顧客はすでに「やってもらえる前提」で社内調整を進めており、今さら戻せない状況になっています。
請求合意のタイミングは、要望受領から原則48時間以内が現実的なラインです。
不足3:契約前提が曖昧
SOW・契約書に「変更時の取り扱い」「軽微変更の定義」「再見積条件」が書かれていない案件では、追加費用の請求根拠が話し合いベースになります。
営業段階で何が定義されていたかを、PMは案件キックオフ時に必ず確認しておく必要があります。
不足4:説明材料が整っていない
請求するには、変更前後の差分・影響範囲・必要工数・代替案・判断期限が必要です。
これらを「言葉で説明する」のではなく、A4一枚で見える形にできているかどうかで、顧客側の反応は変わります。
今日から運用できる変更受付フロー
複雑なツールはいりません。以下の4ステップを徹底するだけで、請求できる案件は増えます。
ステップ1:変更を受けた瞬間にチケット化
口頭・チャット・メールどこで受けても、その日のうちに変更管理表に追加します。番号・概要・要望日・要望者・現時点ステータスの5項目だけで十分です。
ステップ2:48時間以内に一次回答
「影響を確認しますので◯日までに回答します」と顧客に伝えるだけでも、合意タイミングを抑えられます。
ステップ3:A4一枚の変更影響メモを作る
変更概要・影響範囲・追加工数・追加費用見積・代替案・期限の6項目で作ります。これが請求の説明材料になります。
ステップ4:顧客の承認を文書で残す
メール返信1通でも構いません。「ご承認いただきましたので進めます」と書面化して残します。
PM個人ではなく、運用の仕組みとして整える
ここまで読むと分かる通り、これは「PMの交渉力」の話ではありません。会社として変更管理の運用が整っているかどうかの話です。
PM個人に強い人を当てれば請求できる、という状態は、その人が抜けた瞬間に同じ問題が再発します。
案件運営の仕組みを点検したい方へ
「うちの会社では、追加費用を請求できる仕組みになっているか」を経営者・開発責任者が点検したい場合は、PM組織健康診断 を使ってください。
変更管理・顧客折衝・赤字検知・育成体制の観点で、自社の現在地を経営判断に使える形で可視化します。