顧客定例の進行をPM候補に任せることは、PM育成の中でも重要なステップです。顧客の前でアジェンダを進め、確認事項を整理し、次回への持ち越しを決める経験は、資料作成や課題管理では身につかないスキルを鍛えます。
しかし「任せた後で顧客との関係がこじれた」というリスクを考えると、なかなか踏み切れないという管理職は多い。準備なしで任せるのは確かにリスクが高い。ただ、準備を整えれば、PM候補の成長と顧客との関係維持を両立できます。
準備1:任せる範囲を決める
「今日の定例をお願いします」だけでは不十分です。進捗報告のパートだけなのか、課題確認まで含むのか、決定権が必要な話が出た場合はどうするかを事前に決めます。
最初は「進捗報告と課題の確認項目の読み上げまで。顧客からの質問で判断が必要なものは私に振ってください」という設計が現実的です。任せる範囲を明確にすることで、PM候補も「ここまでは自分が話す」という安心感を持てます。
準備2:アジェンダを事前レビューする
定例の前日か当日午前中に、PM候補が作ったアジェンダを一緒に確認します。
確認するポイントは3つです。「議題に漏れがないか」「時間配分が適切か」「顧客から出そうな質問への準備ができているか」。特に3番目は、PM候補自身が「これを聞かれたらどう答えるか」を事前に考える習慣をつくります。
慣れてくれば、「アジェンダを送って。特に問題なければOK、修正が必要なら連絡する」という形に移行できます。
準備3:上司の同席ルールを決める
「毎回同席する」では、PM候補が成長しても上司が出続けることになります。「任せた感」が出ず、顧客からも「上司がいないと判断できない」という印象を持たれる可能性があります。
最初は同席して補足役に回る形から始め、慣れてきたら上司は同席せず、終了後に「どうだったか」を確認する形に変えます。「この段階から同席しない」を事前に決めておくことで、移行タイミングで迷いません。
準備4:会議後レビューを行う
定例終了後の30分以内に、短い振り返りをします。「進行の中で詰まった部分はあったか」「顧客の反応はどう感じたか」「次回に向けて変えたいことは何か」という3点を確認します。
このレビューを毎回続けることで、PM候補の自己評価力が育ちます。最初は答えに詰まることが多いですが、繰り返すうちに「あの質問の返しが不十分だった、次はこう言ってみます」という振り返りができるようになります。
段階的に任せる方法
以上の4つの準備を踏まえた上で、以下の流れで段階的に任せます。
- 上司が進行し、PM候補が同席・メモ役
- PM候補が進行し、上司が同席・補足役
- PM候補が進行し、上司はトピック次第で同席
- PM候補が単独で進行
各段階の切り替え判断は、会議後レビューで「安定して進行できているか」「顧客からの反応が問題ないか」を確認した上で行います。
段階の切り替え目安
| 段階 | 次に進む目安 |
|---|---|
| ① 同席・メモ役 | 会議の流れを理解でき、行動記録が正確に書けている |
| ② 進行・上司補足 | 顧客の質問に詰まっても、「持ち帰り」対応ができる |
| ③ 上司はトピック次第 | 判断が必要な場面以外は単独で完結できている |
| ④ 単独進行 | 会議後レビューで「特に補足の必要がない」が続いている |
「安定している」の判断は主観になりがちです。目安を事前に言語化しておくと、切り替えのタイミングをPM候補と共有しやすくなります。
顧客定例の委譲を含むPM育成の相談は、法人向けPM育成ページから受け付けています。PM候補への段階的な権限移譲についてはコースパックも参考になります。