未経験からIT業界へ。製造業出身の私がPMOとして独立するまでのキャリア戦略

皆さん、こんにちは。テックエイドの鈴木です。

私は現在、PM/PMOポジションの案件をメインにフリーランスとして活動していますが、キャリアのスタートは製造業(大手鉄鋼企業)でした。そこからITエンジニアへ転職し、キャリアを積んできました。

巷では「未経験からエンジニア!年収1000万!」といった華やかな情報も目にします。しかし正直なところ、異業種からITエンジニアに転職し、高い年収を実現するには、相応の努力と「正しい戦略」が必要です。

私自身、IT業界に憧れを抱いてから転職に成功するまで、約6〜7年かかりました。当時、最も困っていたのは「自分と近い境遇の人の成功体験」という情報が極端に少なく、どう進めばよいか分からなかったことです。

そのせいで多くの回り道をしてしまったと感じています。

だからこそ、この記事では、私の実体験に基づき、異業種からIT業界でキャリアを築き、PM/PMOとしてステップアップしていくための「リアルな軌跡」と「戦略」を、包み隠さずご紹介します。

この記事が、かつての私と同じように悩んでいる方の「回り道」を少しでも減らす助けになれば幸いです。


筆者の経歴

まずは私のキャリアの変遷をご覧ください。

  • 2006年~2018年:大手鉄鋼企業
    • 製造現場での品質管理、生産担当
    • 課題改善プロジェクトのリーダー
    • 人事部にて新入社員(100名規模)研修の指導員
    • ベテランから若手への技能伝承プロジェクトを立ち上げ、人材育成を推進
  • 2018年~2020年:SES企業
    • エンジニアとして自動車向けソフトウェア開発プロジェクトに従事
  • 2020年~2023年:受託開発企業
    • Webアプリ、スマートフォンアプリ等の開発エンジニア
    • チームリーダー(10名規模)としてプロジェクトマネジメント、労務管理、人材育成を担当
    • 自社サービスの事業責任者(マーケティング、法人営業、協業パートナー開拓)
    • 並行して採用担当(面接、採用プロセス整備)
  • 2023年~:独立(フリーランス)
    • PMOとして複数プロジェクト(toC向けアプリ開発、データ分析用アプリ開発など)を支援
    • 製造業企業向けのセミナー・動画教材の講師

長らく製造業で働いた後、SES企業、受託開発企業へと転職し、キャリアをステップアップさせてきました。
重要なのは、これら「経歴」の裏で、膨大な「学習活動」を並行して行ってきた点です。


異業種からの転職:最大の壁と、最強の武器

転職の壁:「実務経験」をどう積むか?

未経験からIT業界を目指す際、誰もが「実務経験 N年以上」という求人情報の壁に直面します。

当時の私も、「未経験者はどうやって実務経験を積めばよいのか?」と悩みました。
私の場合は、まず「IT業界に入ること」を最優先の目標に設定しました。

『未経験可でソフトウェア開発の経験が積める(技術は問わない)』という条件で求人を探し、SES(エンジニアを企業へ派遣する)企業へ転職を決めました。

一般的に、エンジニア求人のハードルは以下のようになっていると感じます。

<エンジニア求人のハードル(肌感覚)>
(ハードル低)

  1. SES企業
  2. 受託開発企業
  3. 自社サービス企業
    (ハードル高)

まずは実務経験を積める場所(私の場合はSES企業)に飛び込み、そこで実績を出すことが、次のキャリアへの第一歩となりました。

異業種の経験こそ「最強の武器」になる

転職活動において、ITスキル(プログラミング等)は「伸びしろ」や「自走力」でポテンシャルをアピールしました。それ以上に私が強調したのは、前職(製造業)での経験です。

  • 品質管理
  • 課題改善プロジェクトのリーダー経験
  • 人材育成の経験

これらは一見ITと無関係に見えますが、実はプロジェクトマネジメントの根幹です。

IT以外の経験は、単なる「エンジニア」で終わらない「エンジニア+αの価値」となります。特に、品質へのこだわり、チームでの目標達成、メンバーの育成といった「マネジメント」や「業務改善」の経験は、ITプロジェクトにおいても非常に強力な武器となるのです。


PMOへのキャリアロードマップ

私が独立に至るまでに行ったステップは、大きく以下の3つに整理できます。

1. 基礎学習と「証明」の準備

製造業在籍時から、転職市場で「実務未経験」をカバーするための準備を続けていました。重要なのは、学習したことを「見える化」することです。

  • 学習活動(インプット)
    • プログラミング: オンライン学習サービス(ドットインストール、Progate、Udemy、Coursera等)や書籍(『アジャイルソフトウェア開発の奥義』『リーダブルコード』等)で基礎を習得。
    • 情報技術: 書籍(『キタミ式イラストIT塾 基本情報技術者』等)や動画(CS50等)でITの全体像を学習。
  • ポートフォリオ作成(アウトプット)
    • アプリ開発: 実際にiOSアプリやWebアプリを開発し、App Storeで公開したり、知人のHP制作を請け負ったりしました。
    • 記事執筆: 学んだことをQiitaなどの技術ブログで発信。
    • コンテスト参加: 機械学習コンテスト(Kaggle)に参加し、スキルを客観的に試しました。

2. 戦略的な転職によるステップアップ

私のキャリアは、以下の3段階で構成されています。

  1. 転職(製造業 → SES企業)
    • 目的: IT業界での「実務経験」を得ること。
    • アピールポイント: 独学での学習姿勢、ポートフォリオ、前職での課題改善実績。
  2. 転職(SES企業 → 受託開発企業)
    • 目的: より裁量権のある環境で、上流工程やマネジメント経験を積むこと。
    • アピールポイント: SES企業での実務経験(1年強)+ 新たなポートフォリオ。
  3. 独立(受託開発企業 → フリーランスPMO)
    • 目的: 自身の専門性を活かし、より柔軟に価値提供を行うこと。
    • 背景: 受託開発企業でエンジニアリングだけでなく、PM、営業、採用、事業責任者などビジネスサイドの経験を幅広く積めたため。

3. 「技術+α」の領域へ

重要なのは、キャリアの早い段階から「技術+ビジネス・マネジメント」の視点を持つことです。

受託開発企業時代に、開発リーダー、プロジェクトマネジメント、さらには採用や営業、事業責任者まで経験できたことが、現在のPMOとしての活動に直結しています。

コードが書ける(技術がわかる)だけでなく、プロジェクトを俯瞰し、ビジネスゴールを理解し、チームを動かす(マネジメント)スキルを意図的に磨いてきたことが、キャリアの分水嶺になったと感じています。


まとめ

異業種からITエンジニアを目指し、さらにPM/PMOといった上流のポジションを目指す道は、決して平坦ではありません。しかし、明確な計画と継続力、そして「前職の経験をどう活かすか」という戦略があれば、確実に到達できる道でもあります。

私自身、多くの回り道をしましたが、製造業で培った「品質管理」「人材育成」「プロジェクト推進力」は、今のPMOという仕事の核となっています。

もし今、あなたがキャリアに悩んでいたり、異業種からの転職に不安を感じていたりするなら、ご自身の経験を棚卸ししてみてください。そこには必ず、IT業界でも通用する「強み」が眠っているはずです。

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