若手PMとの1on1が「最近どうですか」「大変ですが頑張ります」で終わっている、という管理職は珍しくありません。雑談としての1on1には意味がありますが、PM育成という文脈では不十分です。
1on1は、若手PMが口に出せていないリスクを拾う場でもあります。週次の進捗報告に書けない「実は顧客が怒っています」「チームメンバーが限界に近い」という情報は、1on1の場でしか出てこないことがあります。
案件を見る観点で1on1を設計することで、問題が表面化する前にキャッチできます。
確認1:計画との差分
「今週の計画通りに進んだ部分と、そうでなかった部分を教えてください」という問いかけから始めます。
「順調です」という答えが返ってくる場合、「具体的に何が完了しましたか?」と深掘りします。完了した作業を言えるなら本当に順調かもしれませんが、「うーん、とりあえず進めています」という答えが出てきたら、進捗の把握が不明確な可能性があります。
確認2:未解決課題
「今、対応待ちになっている課題を1つ教えてください」と聞くと、課題管理の実態が分かります。
対応待ちの課題が「なし」と言いながら実際の案件が詰まっているなら、課題として認識できていない問題があるということです。「期日が来週なのに、まだ顧客の確認が取れていない」という状況を課題と認識できているかどうかを確認します。
確認3:顧客の反応
「最近の顧客定例の雰囲気はどうでしたか」と聞きます。
「問題ありませんでした」という表面的な答えだけでなく、「顧客がいつもより質問が多かった」「スケジュール変更の件を出したら少し顔色が変わった」といった観察があるかどうかを確認します。顧客の反応を自分なりに読もうとしているかどうかが、PM候補の成熟度に関わります。
確認4:チーム負荷
「チームメンバーは今、余裕ありますか?詰まっている人はいますか?」と直接聞きます。
若手PMは自分の作業に追われて、メンバーの状態を見落としがちです。「よく分からないです」という答えが返る場合、チームの状況把握がPMの役割であることを伝える機会になります。
確認5:相談しづらいこと
「上司(私)に言いにくいこと、言うタイミングを迷っていることはありますか」と直接聞きます。
この質問を聞くだけで、「実は言おうと思っていたんですが…」という話が出てくることがあります。相談の心理的ハードルを下げることも、1on1の役割です。
1on1後のフォロー
確認した内容のうち、対応が必要なものはその場で「では来週、私が○○します」「あなたが○○を試してみて、また報告して」という形でアクションを決めます。
1on1で聞きっぱなしにすると、若手は「報告しても何も変わらない」と感じます。小さなアクションでも、次の1on1で「先週の○○はどうなりましたか」と追うことで、継続的な信頼関係が作れます。
「リスクを言いやすい関係」を意識して作る
若手PMがリスクを正直に話すためには、「言っても安全」という心理的安全性が必要です。「報告してくれてよかった。早めに分かったおかげで対処できる」という反応を上司が示すことで、若手が次もリスクを報告しやすくなります。
逆に「なぜそうなったのか」と責める反応が続くと、若手は問題を隠すようになります。1on1でのリスク確認は、「責めない、解決する」というスタンスで行うことが、心理的安全性の基盤を作ります。
「リスクの優先度」を若手と一緒に考える
若手PMが認識したリスクがすべて重大なわけではなく、軽微なリスクもあります。上司が「このリスクはどのくらいの影響があると思いますか?」と優先度の評価を一緒に考えることで、若手のリスク判断力が育ちます。
リスクの評価を経験させることが、若手の判断力の実践的な向上につながります。1on1をリスク管理の「練習の場」として活用することが、若手PMの成長を加速させます。
「リスク対応の選択肢」を一緒に整理する
リスクが確認できたら、対応策の選択肢を一緒に考えることが育成の機会になります。「このリスクに対してどんな対処方法があると思いますか?」という問いが、若手の問題解決思考を鍛えます。
選択肢を並べた上で「どれが最もコストと効果のバランスが良いか」を議論することで、意思決定のプロセスを若手が経験できます。
「リスク感度」を育てるための質問
若手PMのリスク感度を高めるには、「これはリスクか否か」の判断を繰り返し練習させることが重要です。1on1で「今週起きたことの中で、もし放置していたら問題になったかもしれない出来事はありましたか?」という質問が、リスク感度を磨く練習になります。
この質問を毎週続けることで、若手が「日常の業務の中からリスクを探す」思考習慣が身につきます。リスク感度の高いPMが育つことで、プロジェクトの安定性が向上します。
「リスクの見逃し」を非難しない文化を作る
若手PMがリスクを見逃してしまった場合、「なぜ見逃したのか」という非難ではなく「どうすれば次に気づけるか」という学習の観点で話し合うことが重要です。
見逃しを非難されると、「報告しないでおこう」という心理が生まれます。見逃しを学習の機会として扱うことで、若手が積極的にリスクを報告する文化が育ちます。
「1on1の頻度」とリスク管理の関係
1on1の頻度が高いほど、若手PMのリスクを早期に発見できます。週次の1on1は、問題が大きくなる前にキャッチできる理想的な頻度です。隔週になると、1週間の間に問題が深刻化する可能性が上がります。
プロジェクトの重要な段階(要件定義・開発中盤・リリース前)では、1on1の頻度を一時的に上げることで、リスク発見の精度が高まります。
「若手PMの得意・不得意」を把握する
1on1を通じて、若手PMの得意なことと不得意なことを把握することで、適切な案件アサインと育成プランが立てられます。「顧客との関係作りは得意だが、スケジュール管理が苦手」という把握が、不得意分野を強化するための計画につながります。
得意・不得意の把握は、評価のためだけでなく「どう支援するか」の設計に使うことが重要です。支援の設計が、若手PMの自信と実力を同時に育てます。
「1on1の記録」を継続的に活用する
1on1で話した内容・発見したリスク・合意したアクションを記録することで、継続的な追跡が可能になります。「先週話したリスクへの対処はどうなったか」という確認が、若手PMのアクションの実行を促します。
記録があることで、「言いっぱなし・やりっぱなし」を防ぎ、1on1の効果が持続します。
若手PMとの1on1でリスクを確認する習慣は、組織全体のプロジェクト安定性を高める投資です。一人ひとりのリスク感度を高めることが、組織のリスク管理力の底上げにつながります。1on1の質を高める継続的な努力が、PM組織の競争力を作ります。
1on1でのリスク確認習慣は、若手PMとの信頼関係を深めながらプロジェクトを守る実践です。
若手PMの育成体制を整えたい場合は、法人向けPM育成ページで支援内容を確認してください。組織としてのPM管理の課題を把握したい場合は、PM組織健康診断が役立ちます。